今年ももう師走が来た。この時期4、5年干支の毛筆書を頼まれる。文久2年創業の老舗酒店で50年来の友人からの依頼で、酒のラベル(酒造用語では“胴張り”と言うらしい)に干支文字を一字だけ書くのである。私は決して上手とは思っていないが彼の趣向に合うらしい。草書体の書道塾に少し通った事はあるが、あくまでも自己流である。

 しかし、不思議なもので和紙に毛筆書きをすると墨が滲んでいい味が出るもので、自分でもその出来映えに驚くことがある。こんな機会を得たものだから、いつも酒の売り場では品種を見るのではなく棚に並ぶ酒のラベルに目が行くのである。私は無類の酒好きでお酒とは一日も縁が切れない人間でいつも見て来ているが、友人のおかげで昔とは変わった事に気が付いた。それは、ラベルがそれぞれ個性的であり、ネーミングも語り言葉をひらがなでそのまま使っているものとか、人名とか、何代目とか、四文字熟語を変化させたものとか多種多様になっている。それはそれで面白いのだが、私が気になるのはその字体である。うまいと思うものもあれば、これはどうかなとか、これなら自分でも書けるなとか、又なんでこの書体にしたのだろうかなどと酒造元の意図を推察するのも楽しいものである。
酒に縁の無い人でも酒販店でラベルを見るのも楽しいものですよ。

 ちなみに私が書いた干支のラベルの酒が、今、某有名デパートの酒売場に陳列されています。嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な気持ちです。私が密かに目論んでいる事があります。それは、今通い始めたスナックのママに名前入りの酒をプレゼントすることです。喜ぶ顔が見たい。見たい!