「マラソンに出る?」
妻と長男との電話のやりとりでピンときた。
「あいつが愛媛マラソンに出るんや」

 幼児期は、肥満気味で腹の出っ張った子どもで、幼稚園では1回も縄跳びが出来なかった。母親による特訓で、卒園前には、園内の飛び回数で賞状まで受け取れるようになってはいたが、小学・中学と、ぽっちゃり感は拭いきれず、運動とは縁遠い子どもだった。
 それが、中学2年生の頃には新聞配達をすると言い出し、大学入学まで1日も休まず配達し続けた。
 2~3度、元旦に配達を手伝った事がある。手伝ったと言っても、元旦の新聞は通常の3倍から4倍もある為、中継所を決めて新聞を車に積んで待機してやっただけの事。中学生の頃は、親として何かしてやりたかった事を思い出す。
 また、高校生になると、フィールドホッケー部に入部し、インターハイや国体に参加することもあった。
長男の机の引き出しには、いくつもの金銀銅メダルが、無造作にゴミのようにあった。
 校内マラソンではいつも1位か2位の表彰状をもらっていたと思う。
 大学でも続けたフィールドホッケーでは、大学卒業後も某大学の指導員の委託を受け、
後輩の指導をしていたようであった。
 もう、数十年前になるが、会社帰りの国道でランニングをしている若人を見て、「かっこいい走りやなぁ」と思い、通りすがりに顔を見てみると・・・、長男である。一生懸命走る姿に、なんだか涙があふれてきて、一瞬前が見えなくなってしまった。
 愛媛マラソンのテレビ中継は、毎年見ている。そして、いつも色々な感動をもらう。「長男も走ればいいのになぁ」と常々思っていた。それが実現しそうである。
 長男がかっこよく走る姿を見てみたいものだ。ひとしきりの感動を得るに違いない。“親バカ”丸出しで応援しに行きたい。妻と嫁と孫といっしょに。
“ジョギングシューズ”くらい買ってやるぞー。
 まぁ、父親の遺影を持って走らさないように、元気でいなきゃね。