会社の綿野氏の机の上に、一枝の椿が生けてあります。この一枝をこの12年間絶やさず送り続けてくれている友人がいます。
 今年、姉の13回忌を迎えました。20年近く毎年この椿が咲くのを楽しみにしていましたが、60歳の健康診断でガンが発見され、悪性の為、何度も何度も手術を繰り返した末、2年間の闘病生活の後、自宅に帰ることなく死んでしまいました。
 病院の食堂の片隅で外の空虚に見つめていた姿を思い出します。自分の体が一番大切なのに、見舞いに行くと私の体をいたわってくれました。
 姉のガンが発見されてすぐ、姉の為に水洗トイレにと浄化槽を設置することになりました。その時当社の設備士だった友人が立ち会う事になったのですが、設置場所に姉が見守り続けた椿が紅白2本あったのです。姉の許可を得て撤去しましたが、友人が姉の為にこの2本を持って帰って付かせてみようと言ってくれたのです。重機で掘り起こす為根は切れ、土を少し残したままの醜い状態ででした。彼の家の庭の目立つ所に植えていました。根付くのは難しいと思われましたが、赤い椿だけが辛うじて根付く事が出来ました。
 翌年、沢山の花が咲き、友人の知らせを受けて見に行きました。見事に咲き誇っていました。
 しかし、姉はこの椿の花を見ることなく死んでしまったのです。友は“これは姉さんの花だ”と言って毎年毎年、色々な方法で届けてくれます。
 私はいつも友人の好意を感じつつ見守っています。綺麗なあの世からの贈り物です。 合掌