定年期を間もなく迎える団塊の世代。少し時間にゆとりができ、自分の好きな事、やりたかった事に専念できる時が来た。仕事柄毎日新築・増改築の設計図面を目にする中、この頃よく見かけるのが、趣味の室・工房である。まれに夫婦それぞれにもうけているケースもある。長い期間他人の為に費やした時間を、今度は自分の為だけに使いたいとの願望の表れではないだろうか。それは残り少ない人生の中で大変有意義な事ではないでしょうか。

 60才から始めて70才までの10年間、子供なら中学校・高等学校・大学と通う年数である。一途に10年の時を費やせぱ、プロ並みの職人となっているはず。“一芸は多芸に富む”の諺のとおり、一つの知識を得んが為には、あらゆる情報を仕入れなければならない。そこから又新たな出会いと発見と感動が生まれるのである。

 陶器・絵画・写真・書道・華道・手芸・釣と諸々、趣味の室・工房はあるが、なかなか目にする事が出来ないのが厨房をもうけた料理の室である。今、団塊世代の諸氏にお勧めしたい、料理の室を!“男の癒は厨房にみつけたり”
四帖半ほどの室に、流し・カウンター・食器棚、二帖ほどの和室。誰の遠慮もいらない小さなこだわりのある自分だけの空間を持つ。食材・調味料・料理法・盛り付け方といった奥の深い世界が待っている。

 食材・調味料は出来る限り自然農法で自分で耕し作る。料理法は、まず出刃包丁の使い方から始まり、魚・肉類の解体までやり熟す。盛り付け方には特にこだわって盛る。有田・備前・瀬戸といった焼物を、その食材に合わせる。叉、自作の器でもいいでしょう。四季折々の自然の草花木を加えて一幅の絵画のように盛り付ける。そしてその時々に疎遠になった友・知人・子供達・妻・妻の友人を招いての接待。作って、食べて、飲んで、会話して、一期一会の感動にひたるのである。一期一会の為に、何日も時間をかけて、又はるか遠くまで足を運び、食材を調達する。そこに至福の喜びをみつける。我が家に頑固おやじの赤ちょうちんの暖簾を掲げ包丁を振るおう!